「先生、入れ歯って嫌だね…」
「先生、今までちゃんとしてこなかった私が悪いんだけど、入れ歯って嫌だね…。」
私がまだ駆け出しの歯科医師として勤務医だった頃、ある患者様にこう話しかけられました。
その患者様は、「やっぱり入れ歯ってさ、喋りにくいし、気持ち悪いし、何を食べても美味しく感じないんですよね。こんなことになるのなら若い時にもっと歯のことを考えてちゃんとしとくんだったなって今になって後悔しています。なんだか生きるのが楽しくなくなってきちゃいました…。」と続けられました。
そして、「先生、インプラントってあるでしょ?あれ、怖いって話も色々聞くけれど、実際どうなのかしら?入れ歯よりもずっといいものなら考えてみようかなって思っているの。もうこのままじゃ嫌だし…。」と話されました。
私の担当だったその患者様は、それまでに何度も他の歯科医院さんで入れ歯を作っては使わなくなり、また作り直して…というのを繰り返されていました。その時も、入れ歯を何度も調整していたのですが、やはり毎日、様々な違和感を訴えていらっしゃいました。
噛めない! 喋りにくい!煩わしい!
という入れ歯の欠点が本当に気になって仕方がないと、いつもおっしゃっていたのです。
もちろん、最初に私が担当になったときにインプラントのお話もさせていただいたのですが、その時は「怖いから…」という理由で拒否されていました。
なんでも、お友達から「良くない」って話を聞かされていたみたいです。ですからその時は無理にすすめることはしませんでした。
やっぱり、インプラントを考えてみたい
しかしその患者様から、「やっぱりインプラントを考えてみたい」とのご要望がありましたので、私はインプラントの利点だけでなく欠点も含めて丁寧にご説明をしました。
すると、「そんなに先生がおっしゃってくれるなら、私頑張ってインプラント入れてみます。ちょっと怖いけれど、先生を信頼して頑張ってみようと思います。詳しく教えていただいてありがとうございます。よろしくお願いします。」とのお言葉をいただきました。
ものすごく嬉しかったのを覚えています。ですが、ここで一つ問題がありました。
当時は歯科医師になってまだ2年目の駆け出しの歯科医師。国家試験が終わっても日々、勉強をしていましたから知識はあります。診療日は毎日トレーニングもしていましたから、少し難しい一般診療もそつなくこなせるようになって自信はついてきた時期でした。
しかし、インプラントのような特殊な治療に関しては大学の歯学部では当時ほとんど講義も実習もなく、教科書や専門書の知識しかありませんでした。当然治療スキルなんてものは全くありません。
当時勤務していた歯科医院では、その医院の院長はインプラントを全くしていませんでした。当然、治療を見学する機会もありません。インプラントをする患者様も殆どいらっしゃらなかったのですが、「どうしても…」と望まれる患者様は大学病院などに紹介していたのです。
その患者様は私を信頼して、私にお願いをしてくださっている。それなのに、私はその患者様の期待に応える技術が無い。歯科医師として本当に情けなく、悔しい気持ちになりました。
私を信じて、不安な治療を頑張ってみると勇気を出してくださった患者様に対して、私は紹介状を書くことしかできない。通ってくださっているこの医院で処置することもできない。そんなやるせない状況をなんとかできないかと考え、当時の院長に相談してみました。
そして、インプラント専門で出張オペをしている先生にコンタクトを取っていただきました。その先生は、当時の院長のご友人だったのですが、各地にインプラントの出張オペに出かけてインプラント治療を専門的にされている先生でした。
その先生が来てくださることになり、無事、その患者様にもインプラントのオペが成功したのです。
その時の患者様の笑顔が今でも心に残っています。
それからはインプラント希望の患者様がいらっしゃると、その先生にお願いをしてインプラント治療をしていただくようになりました。
私はやがてその医院で院長代理を任されるようになり、治療の全権を管理して忙しい毎日に流されていくようになりました。インプラントの患者様も何人かいらっしゃって、私の担当患者さんのインプラント時には、そのインプラント専任の先生に来ていただいて私がオペのアシスタントについて補助プラス見学という日々が続きました。
それはそれで良かったのですが、それから何人かの担当の患者様に、「インプラントやって良かった。ありがとうございます。でも先生はインプラントしないの?先生にやってほしかったのに。」という、お言葉をいただくこともありました。その度に、少し情けなく申し訳ない気持ちになっていきました。
「このままじゃ、やっぱりいけない!」私はそう思うようになり、決心しました。
もちろん、その医院での方針がありますから、「私にインプラントをやらせてほしい!」と無理にお願いすることはできません。ましてやその技術も当時の私にはありませんでした。ですから私は独自でインプラントについての勉強を始めました。
勉強の日々と、恩師との出会い
自分で毎月、3種類の専門書を購入していましたので、最新の知識はありました。ですが、表向きの綺麗な症例集はあっても、トラブルがあった時の対処法や本当に細かい技術などは月刊の専門書にはあまり掲載されません。
そこで、様々な勉強会やセミナーに参加するようになりました。
歯科の専門的な勉強会やセミナーは非常に高額です(笑)
ですが、どんなに有名な先生でも、最初はそうやって自分で勉強をして、知識を増やしトレーニングを積んで上手くなっていくのです。私は、将来の自分への投資だと割り切って、かなりたくさんの勉強会に出席しました。
セミナーの中には、難しいオペを実際に見学できるものもありますし、模型や豚の顎の骨を使っての実習トレーニングを積むものもあります。専門的な知識や技術が身についていくのが自分でも分かります。そして、その勉強をしていく中で、自分の目標とする先生…師匠というか、メンターの先生ができたのもとても大きかったです。
私にとって、野阪泰弘先生との出会いでインプラントへの知識、技術がかなり上がりました。
野阪先生は、兵庫県の芦屋で『野阪口腔外科クリニック』を開業されています。もともと、口腔外科の専門医なのですが、今はインプラント関連治療以外は一切されていません。一般の歯科治療も一切されません。クリニックのHPもないのですが、他からの紹介で非常に難しいケースのインプラントや、トラブルになってしまったケースのリカバリー、そして全国での講演活動などで非常に忙しくされている先生です。全国でも、インプラント治療においてとても有名な先生です。
野阪先生には本当に多くのことを教えていただきました。日々、勉強し続けていきますが、人間的にも技術的にも、いつか野阪先生のような素晴らしい人になりたいと思っています。少し話が逸れてしまいましたが、私の歯科医師人生の中でインプラントは、もはや切っても切り離せないものになっていきました。
自分でインプラントを勉強していくと、色々なことが分かってきます。やはり、他から借りてきて間に合わせるのではなく、自前の医院で揃えなくてはいけないものがいくつかあるということ。インプラントをされる患者様の、それまでの治療背景や生活環境も、治療の予後に大きく作用してくることなどが分かってきました。
そしていつしか、自分の医院ではこうしたい!こうしなきゃいけない!という想いに変わっていきました。
それを形にしたのが、りお歯科クリニックのインプラント治療です。
りお歯科クリニックのインプラント治療
やはり、インプラントの治療をするにはCTの撮影が不可欠です。CTを撮らずにインプラントのオペをするということは、地図も持たずに知らない土地で目的地を目指すようなものです。ちゃんとした目的地にたどり着けるはずがありません。CTは優秀なナビゲーションだと言っても過言ではありません。
従来のパノラマ写真だけでオペするのは、危険が多すぎます。
インプラントにとってCT撮影は基本中の基本ですね。
当初は岐阜大学病院にまでCTの撮影に行っていただいておりましたが、現在では院内に歯科用CTが完備されています。やはり治療計画に必要な術前だけでなく、術後の確認もできるところが自院にCTがある強みだと確信しています。
オペするのに専用の個室も必要です。決まった場所で、他の雑音や影響を受けにくく、患者様もリラックスできる空間を作る必要があります。
そしてオペには必要な道具が数多くあります。そのどれもが毎回違う場所で、他の雑多な空間に置いてあったとしたらどうでしょう?術者の集中力も違ってきます。医科のオペをオープンスペースで行うことはあり得ないですよね?歯科でもしかるべきです。
オペには専用の無影灯と呼ばれる影のできない専用ライトが必要です。通常、移動はできません。ですからオペ室というのが存在するのです。りお歯科クリニックにもオペライトが設置してある専用ルームがあります。
オペにはモニタリングも必要です。
オペの最中に血圧が異常に上昇したら?頻脈になったら?
それはすべて体が出すシグナルです。モニタリングしないでオペを行うことは、医科では考えられないことです。当然歯科でもその基準は満たすべきだと私は考えています。
当院では、すべての患者様にモニタリングを行いながらオペを行います。
信頼のあるインプラントメーカー。
世界中に70社以上のインプラントメーカーが存在します。
その中には世界的に信頼の置かれている優秀な製品もあれば、値段は安いがそれなりのものも実際にはあります。
ですが、インプラントは体に入れて使っていただくもの。体の一部になると言ってもいいでしょう。そこに、値段が安いからといって、信頼の置けないものを私は決して使いたくありません。当院で使用している「アストラテック」というメーカーのインプラント。
私は構造的にも性能的にも世界的にも信頼性の高いインプラントだと信じて使用しています。
患者様のために、こだわりたい
他にも私のインプラントに対するこだわりは、沢山あります。その一つ一つがすべて、患者様のためのものです。
もちろん、すべてを揃えるのにお金はかかります。時間もかかります。日々の勉強もトレーニングも必要です。でもその全てが、りお歯科クリニックにはあります。それが私の自負であり、誇りでもあります。
患者様にとって、本当に良いインプラント治療を、本当に良い環境で提供できる!それを今は形にできました。
私は今までに1000症例以上のインプラント治療を、りお歯科クリニックで行いました。
成功率が92~95%と言われるインプラント治療。ですが、私自身、まだ1度の失敗例もありません。それは的確な診断と技術、そして環境によってのことだと思っています。
「すべての患者様に満足していただけるように…。」
私はこれからも妥協のない姿勢を貫いていこうと心に決めています。